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262650放課後[air]
[背景:教室]
本日の授業が終わる。
永二
「一矢〜帰ろうぜ」
一矢
「ああ」
永二が鞄を持ってやってくる。
必要最低限のものだけを鞄に入れる。
翔と七心が来るので、俺たちは少しだけ待つことにする。
帰るときはいつもこのメンバーだ。
一矢
「そういえばお前いつ勉強してるの?」
永二
「う〜ん、家で1時間くらいだな」
一矢
「ほぉ〜……てっきり8時間位してるもんだと思ってた」
永二
「無理だっつうの」
永二
「ま、基礎ができてりゃ出来るもんだって」
一矢
「基礎?」
永二
「英語だったら単語と文法、数学なら公式とかだな。ああいうのをしっかり覚えて、あとは応用をちょちょいと覚えればだれでもできるよ」
永二
「高いピラミッドを造ろうとすると、まずはしっかりとした基礎が必要だろ?」
一矢
「まぁそうだな」
永二
「それに高い高いピラミッドを造るんなら、面積が広い基礎となる一番下の土台が必要だろ」
なんか長くなりそうな説明が始まった。
永二
「20平方メートルの土台と40平方メートルの土台をくらべたら、きれいで高いピラミッドを造れるのは40平方メートルの方なわけだ」
永二
「だから、土台となるところを広く、そしてしっかり作っておけば、高みをめざせるってことだ」
なるほど。
んまあ、意味は分かった。
永二
「だから、英語なら単語と文法。数学なら公式、国語なら漢字と文法、そして想像力が必要ってわけだ」
ああ、つまり俺には無理だってことか。
そんなに勉強は出来ない。
まぁ、俺には関係ないことだし、そういう話は別にどうでもいい。


「またせたか?」
七心
「なにの話してたの?」
翔と七心が教室の中に入ってくる。
一矢
「別になんでもねーよ」
七心
「教えてよ〜」
鞄を持って教室を後にする。

[背景:通学路2 夕方]
夕方の住宅街。
小学校からランドセルを背負って帰っている子がちらほらと自分の家に帰っていく。
鞄にネギやらじゃがいもやら食べ物を入れて帰ろうと歩く主婦とすれ違う。
そんなところで4つの影が地面に並んで落ちている。
永二
「高いピラミッドを造ろうとすると、まずはしっかりとした基礎が必要でしょ?」
七心
「そうだね、土台が小さかったら細長い変なピラミッドになるもんね」
俺で反応が薄かったからまた話してやがる。
…………。
いつもの風景。
日常。
高校に入ってから特別なことがない限り、いつもこの日常が訪れる。
最初はこの風景は新鮮なものだった。
馬鹿みたいに今日起こったことを語り合いながら家へと帰る。
そして、今これが普通のことである。
はたから見たらこれが幸せなのだろう。
でも……それでも、他の面白いことが起こればいいのにと思っている俺は、だめな奴なんだろうか。

「ちなみに、日本史や世界史はどう勉強すればいいのだ?」
永二
「あ〜……歴史はほんとうにすべて覚えるとしか言いようがないね」

「なにか簡単に覚えられるものはないのだろうか」
永二
「年号は語呂合わせとかで覚えたら少しは楽だろうね」
永二
「なくようぐいす平安京とか、いちごさばく刀狩りとかね」

「なるほど……覚えておこう」
七心
「文化とかは難しいよね、いっぱいあって」
永二
「その時代に出版された本とか、あとは宗教とか絵画とかね。そういうのは必死に覚えたほうが早いかもね」
七心
「なるほど〜」
今日の学校帰りの話は永二主役の勉強方法についての話になっている。
俺には関係のないことだから、今日は聞き流すだけになっている。
……普通の日常、か。

[背景:曲がり角 夕方] 
永二
「んじゃ、ここで」
曲がり角にさしかかる。
いつもここで俺と七心は永二と翔と別れる。

「また明日会おう、一矢殿。七心殿」
七心
「うん、また明日ねー!」
七心が二人に手を振る。
二人も俺たちに手を振って、俺たちとは別の道を歩き出す。
俺たちも家に帰る。

[背景:通学路1 夕方]
一矢
「七心」
七心
「なっとうねばねば平城京……なくよううぐいす……あれ、なくようぐいすが平城京だっけ……?」
一矢
「おい七心」
七心
「ひゃいっ!!」
俺の前をスタスタと歩く七心の肩を叩くと、猫の様に驚き飛び上がる。
七心
「あ、ごめんね一矢君。なにかな?」
一矢
「……ほらよ」
鞄から鍵を取り出し、七心に渡す。
七心
「……なにかな、これ?」
一矢
「俺ん家の鍵」
七心
「えっ!?それって……」
一矢
「バスケットボール投げられて窓壊されちゃたまらないからな」
一矢
「いらないのか?」
七心
「ううん! いる!」
七心が俺の顔と鍵をじーっと見くらべる。
七心
「あ、でも一矢君が家に入れないんじゃ……」
一矢
「大丈夫だ、それ予備だから」
財布からもう一つ鍵を取り出して七心に見せる。
七心
「あ、じゃあ大丈夫だね」
七心が自分の財布に鍵をいれる。
これで窓を壊される心配はいらない。
物を盗むとか、そういう心配もないしな。
七心
「えへへー」
七心がじーっと俺の家の鍵が入った財布を見る。
一矢
「どうした?」
七心
「あ、ううん! なんでもない……えへへっ」
一矢
「ちなみになくようぐいす?」
七心
「へっ? あ、えっと……」
七心
「平城京!!」
…大丈夫だろうか。
一矢
「それと、もう一つ言っていいか?」
七心
「なに?」
一矢
「お前が今復唱している年号の問題、高3じゃなっくて中3の問題な」
七心
「え!? そうだっけ……?」
…………。
こいつはどうやって、こんな有名高に受かったのだろう?
七心
「一矢君見かけによらず、頭良いよね」
一矢
「見かけによらず、は多い。いや、見かけ通りそんないい点取ってないか」
七心
「でも、やれば出来るのに……」
やれば出来るねぇ……。
そういえば、中学までは良い点取っていた気がするな。
どうしてやらなくなってしまったのだろうか? ……いや、思い出したくはない。
のんびりとそんな会話をしていたら、七心の家の前まで着いた。

[背景:七心家前 夕方]
七心
「じゃあね一矢君、また明日」
一矢
「ああ、もう物を投げようとするなよ」
七心
「う〜っ、もうしないよぉ!」
七心が頬を膨らませながら玄関扉の奥へと消える。
俺も帰って風呂にでも入るとするか……。