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262620朝、学校[air]
[背景:教室]
七心
「はい、到着だよ」
なんとか七心に肩を借りてチャイム前ギリギリに教室へ飛び込む。
朝から階段で派手に転んだため、俺の体は授業が始まる前からすでに悲鳴を上げているわけだ。
七心
「じゃ、じゃあお昼休みね……」
といって、七心は自分の教室へと走っていく。
俺は3年A組、七心は3年C組だ。
[SE:チャイム]
ホームルームのチャイムが鳴る。
七心もギリギリ間に合っただろうな。
しかし、担任のセンコーが来ない。なにやってるんだ。
永二
「よぉ一矢、今日はギリギリこれたじゃねえか」
チャイムが鳴ったにもかかわらず一人の男が俺の机の側にやってくる。
一矢
「ん? なんだ永二か」
永二
「そう……頭脳明晰、スポーツ万能、容姿端麗。学年1のアイドル! 江波 永二[ルビ:えなみ えいじ]といえばこの俺様のことさっ!」
朝からテンションが高すぎる。
身体ボロボロの俺とはまったく正反対だ。
図に乗らなければ良い奴なんだけどな。
永二
「なんだよ? その言いたそうな目は」
一矢
「永二、お前はもう一度自分の名前をよく見ろ」
永二
「あん?」
一矢
「お前は「永」遠の「二」番手だろ」
永二
「上手いこと言ったつもりか!!」
こいつは江波 永二[ルビ:えなみ えいじ]。
文字通り、永遠のナンバー2だ。
……。
前に1度説明したような気がするんだが……まぁいいか。
永二
「くっそぉ……あいつがいなけりゃ学年トップなのによぉ」
一矢
「あいつ?」
永二
「ほら、古谷の事だよ。古谷つくし」
永二
「ずっと学年で1位のやつだよ。少し前に話しただろ」
一矢
「あー、なんか言ってたな」
永二からそんな話をされたような気もするが、覚えてない。聞き流していたのだろう。
永二
「ん? 一矢、お前デコにアザみたいなのがあるけど、なんかあった?」
永二が俺の頭をのぞき見る。
一矢
「あぁ」
さっきの階段で転げた時のやつか。
デコのは軽い擦り傷。ヘタにぶつけて大事には至らなかったのが不幸中の幸いか。
とりあえず永二の腹を殴っておく。
[SE:ドゲシッ!]
永二
「あおち!! なぜ急に殴る!?」
一矢
「昨日のお返しだ」
永二
「なんのだよ!? なんのお返しだよ!」
一矢
「このアザ……忘れたとは言わせねぇぞ」
永二
「忘れてないというかまず昨日お前に会ってねえよ!!」
一矢
「……会ってない?」
永二
「ああ」
一矢
「あー……そうか昨日は日曜か。なんか木曜ぐらいかと思ってたわ」
永二
「木曜って……。一矢、頭打って数日くらい記憶跳んだんじゃないの?」
一矢
「ほう、言うじゃねぇか。とはいえ、事実そんな感じなんだがな……」
永二
「おいおい、大丈夫かよ」
一矢
「まぁ気にするな」
永二
「気分悪いようなら病院行けよ」
一矢
「お前こそ。悪いようなら病院行けよ」
永二
「お? なに、自分から殴っておいて心配してくれてんの? やっさしい〜」
一矢
「精神科」
永二
「失礼にもほどがあるよ!!」
[SE:扉の開く音]
担任
「すまんすまん! 号令!」
センコーが急いだ様子で教室に入ってくる。
永二
「くっそ……今度のテストでは1位とって、今後はそういうこと言えない様にしてやるからな!」
永二が自分の教室に帰ってから捨て台詞を吐く。
一矢
「なっても言うけどな」
永二
「言うなよ!」
とかなんとか言いながら永二は自分の机に戻った。

…………。

朝のホームルームが終わり、担任が教室から出ると、前の方から小さな女子がひょこひょことこっちに近づき、俺の机の前で止まる。
???
「一矢〜、ふ〜あ〜ゆ〜?」
質問がおかしい。
一矢
「機嫌を聞くときはハウ アー ユー だ。
知ってるやつに『あなたは誰ですか?』って聞くのはすごい失礼だ」
???
「あ〜……これはまたみぃのみすたけですネ」
一矢
「TAKEはテイクだ、ミステイク」
ミスタケってどんなキノコだ……。
???
「おぉ!なるほど! 一矢はばいりんがるですネ!」
一矢
「いや、これくらいの英語は誰にでもできる」
こいつの名前はジョセフィーヌ・クリスティーン・オブ=ジョイトイ 本名佐古 乙姫[ルビ:さこ いつき]。
本人が本名で呼ばれるのを嫌がってるため、俺たちはもちろん、センコーまでジョセフィーヌと呼んでいる。
アメリカかぶれでやたら英語を使いたがる。
……あれ?
このくだり、前にもやったことあるよな…。
いつやったんだっけな……。
…………ま、いっか。
ジョセ
「ところで一矢、今日も遅刻ぎりぎりでしたネ」
一矢
「あぁ、七心に無理矢理起こされた」
ジョセ
「3回ちこくは1回けっせき扱いになりますヨ〜」
一矢
「へいへい、いつも最初に来てるやつはすごいですねー」
ジョセ
「フフン! 朝はぺーぱーにゅーす配達のばいとをしてますからネ」
一矢
「ちなみに新聞はニュースペーパーだからな」
ジョセ
「ありゃりゃ……、またみぃ、みすたーけですネ」
一矢
「テイクな、タケ伸ばしただけじゃねえか」
それにしても新聞配達か、結構儲かるんだよな、あれ。
だけど朝きついし、道順憶えなくちゃいけないしで俺は1ヶ月で止めた。
ジョセ
「それで朝早く終わるので、早めにはいすくーるすちゅーでんとへごーというわけですヨ」
一矢
「スチューデントいらないから」
なんでこいつはこんなに英語を間違えるんだ。
んまあそれがジョセなんだけれども……。
一矢
「で?そんなにはやくに学校に来てなにしてるわけ?」
ジョセ
「わーくですネ!」
サムズアップをして胸を張る。
一矢
「……勉強?」
ジョセ
「いえ〜す! みぃはほーむよりすくーるの方がわーくがはかどるのですヨ」
あぁ、いるいる、そんなやつ。
まぁ俺は勉強は全くやらないんだがな。
ジョセ
「ちなーみに、1時間目には古典の小てすとがありますヨー」
一矢
「まじか……」
まあべつに小テストとかどうでもいいんだけどな。
でもまぁ、すこしは勉強しておくか。
一矢
「範囲はどこまでなんだ?」
ジョセ
「小わーく集の42ぺーじから50ぺーじまでですネ」
げ、かなりある……。
ジョセ
「みぃもまいですくにばっくしてわーくの続きをしますヨ〜」
一矢
「おお、さんきゅ」
しかし多いな……これじゃああと5分では全部見れないぞ……。
半分のページだけに的を絞ってみるか。
2・3点は取れるだろ。
俺は机から小ワーク集をひっぱりだし、黙々と読み始めた。